【R18】拐かし(2011) - 1/3

※R18作品です

18歳以上(高校生除く)の方だけお読み下さい

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一日目

 

伊豆の海はまだ冬色だ。もう陽が沈む頃合いだが、雲が低く立ちこめる空は白くくすんでいる。この部屋の窓からは人の喧噪は遠く、凪いだ海の静かなさざなみの音しか聞こえない。この濁った夕刻の景色に奴は何を見ているのだろう。そんなことを考えながら、零は窓辺に佇む板倉の肩越しに水平線をながめていた。

この男に手を引かれ、何の前触れもなくこの場所に連れてこられてから、一切の言葉も視線も交わしていない。零はじっと動かない板倉の背中を見つめる。何かを待っているのか。何かを堪えているのか。言い知れぬ予感に、零はじりじりとしていた。一瞬、このまま逃げようか、という思いが脳裏をかすめたが、こわばった身体は動かない。自分はこの男に拐かされたようなものだ。着のみ着のままの零には、ここから一人で帰ることは容易ではない。そして、これからここで何が起こるのかということくらい、十分に分かりきっている。

焼けるような予感の圧迫に耐えかねて、板倉、と呼びかけた零の声は、久々の発声のために細くかすれていた。思わず出た声音を恥じうつむきかけるよりも早く、零は唇をふさがれていた。

零の顔を捕らえた男の骨ばった手が、頬と首筋に熱く感じる。執拗に噛みつかれ吸われる舌や唇の感覚が一気に鋭敏になり、たまらず零はふるえた。興奮と息苦しさで零の呼吸が熱くなるまで、板倉によって有無を言わさぬ責めが与えられた。やがて濡れた音を立てて唇が離れ、やっとのことで頭の拘束を解かれたが、息つく暇もなく零は畳の上に転がされる。無言で足を割り開かれ、シャツの下の素肌に熱い手が這わされる。首筋をぬめる舌でなぞられても、胸の突起を愛撫されても、零は身体をふるわせるだけで動けなかった。それは恐れからなのか、それとも期待からなのかはよく分からない。ただ、零がこんな場所までやってきたのは、この男に連れ去られたからということだけでなく、自分の意思がそれを望んでいたからでもあるということは、頭の隅で分かっていた。

板倉の愛撫が胸から下へと下っていき、ジーンズの前を開かれる。その光景を見るのは恥ずかしかったが、零は目をそらすことができない。すでに熱くなりかけた零のものを、板倉はいきなり舌を使って舐め上げた。熱をもった急な刺激に、零は思わずびくりと腰を浮かせた。分かりやすい反応をしてしまったことに零が恥じ入る間もなく、板倉が零のものを口腔に含んだ。じんと熱い粘膜の壁に自身を包まれ、甘い衝撃が零の中心を貫く。たったこれだけのことにも声を殺すのが難しく、本格的に粘膜をすられ始めると零はたまらず顔をおおって熱い息を吐いた。零が好むやり方を簡単につきとめられ、集中的にその方法で責められる。それにいちいち反応して零のものがびくりと快感を訴える。その様子をつぶさに観察されているのは分かっているが、零は煽られてたかぶっていく熱を止めるすべが見つからない。唐突に先端をきつく吸われて、不意をつかれた零は小さく声をあげて吐精した。断続的に吐き出した精を全て搾り取られてから、零は脱力してざらつく畳に四肢を落とした。口淫という普段では考えられない快楽の刺激によって、零は弛緩しきっていた。そのため、板倉が次の段階に進むため零の足を持ち上げるのを、とどめるタイミングを完全に逸していた。

「い…板倉…!」

本能が危機を訴え、零は我に帰って頭をあげた。下を完全に脱がそうとする板倉の手を必死につかむ。ここで初めて板倉が口を開いた。

「邪魔すんなよ」

静かだが有無を言わさぬ口調に零は狼狽した。

「で…でも…」

ここから先の行為は、聞いたことはあっても、実際に自分の身に起こる場合を想像したことがなかった。いや、想像しようとしたとしても、恐ろしくてできないだろう。未知への恐怖に抵抗の力が強まる。零の反発に板倉は一旦手を止めたが、許されたわけではなかった。零の両手をつかむと、板倉はネクタイを解いて拘束に用いた。更に零の身体をひっくりかえして、尻を高く上げさせる。無意識に逃れようと零がはいずっても、腰をつかんだ板倉の手が強力に押しとどめてしまう。

やがて何かが体内に挿入される初めての感覚に、零はびくりとして動きを止めた。内側から加えられる圧迫感に歯を食いしばって耐える。どうやら指が入れられているようだ。内壁をえぐるような指の動きが零の身体をこわばらせる。自分でも触ったことがない深奥に与えられる刺激に目が潤んだ。そして、痛いほど熱を持ったその場所の、ある一点を男の指がかすめたとき、零の目の中に火花が走った。驚いたような切なげな声が零の喉から出て、身体がびくりと震えた。その反応を見逃すはずもなく、板倉の指がそこを執拗に責め始める。急激に腰がうずきはじめ、荒い息とともにか細いあえぎ声が出てしまうのを抑えられない。射精時のものとは明らかに違うぞくぞくした刺激に、零はわけがわからないまま翻弄された。もう耐えられないと根を上げそうになったとき、唐突に指を引き抜かれた。零を追いつめていた刺激の波が引いていき、安堵して大きく息をつく。だが、脱力して畳に額をついている零にかけられた一言に、零は再び緊張した。

「入れるぞ」

はっとしてふりむく間もなく、更に大きな質量が零の体内に侵入してきた。胴体の中心にうちこまれる太い杭に、身体をまっぷたつに割り裂かれる気がした。初めて受け入れる零に対して容赦なく、一気に肉棒の根本まで埋められる。雷に打たれたに等しい衝撃に、声すら出ない。息もつけずに衝撃の余韻をこらえていると、おもむろに板倉の上体が覆い被さってきた。板倉はすでにジャケットを脱いでいて、シャツ越しに彼の熱い体温が伝わってくる。そして小刻みに震える零の体内にそのまま射精された。熱い体液が注がれる感覚に零はじっと耐えた。

精を放っても板倉自身は全く萎えることなく質量を保っている。粘液のおかげで滑りやすくなった腸内で、ゆっくりとだが逆らうことを許さない力強さでの抽送が始まった。零はされるがままに身体をゆさぶられる。先ほど探り当てられた前立腺を再び集中的にえぐられ、圧迫される苦しさとうずくような快感に同時に押し寄せられて、こらえきれずに嗚咽をあげた零の目から涙がこぼれだした。
板倉の指が、蛇のように全身をなぞるのを感じる。胸の突起を摘まれると、火照った身体が敏感にその甘い刺激を享受した。板倉の手によって与えられる絶え間ない苦痛と快楽の質量に耐えきれない零は、今にも気が狂いそうだった。

男の性器に貫かれ揺さぶられて、身体の熱を高ぶらせ喘いでいるこの状況は異常であること甚だしいが、零を押さえつける板倉の手は強力で、逃げ出せない零には翻弄されるしか術は残っていない。思えば、この男はやくざなのだった。そのこわさを今更ながら零は痛烈に思い知った。その板倉の手が今度は零のものをつかんだ。それはとうに固くなっていて、骨ばった手に擦られて悦ぶように震えた。与えられる刺激全てに反応する発情し切ったこの身体が、まるで自分のものとは思えなかった。
亀頭をもてあそばれ、脳がとろけて何も考えられない。

ただ快楽の電気信号だけを受け入れて、更に激しく揺さぶられながら、零は無我夢中に二度目の精を放った。